CONTENTS コンテンツ

2023.06.09

いつまでも眺めていられるもの

 

初めまして。大阪オフィス研修生のDです。

日本建築の装飾を少し紹介させていただきたいです。

少し長くなるかもしれませんので、写真だけでも見てもらえると嬉しいです。

 

皆さんは神社やお寺を訪ねるときに何を見ていますか?日本には寺院が沢山ありますよね。しかし、ちゃんと観たことがありますでしょうか。

私は日本古建築の中でも、特に寺院が奇麗で好きです。屋根も門も奇麗ですし、一番興味深いのは装飾です。どの寺院も共通点はありますがそれぞれ少しずつ異なっているので、何時間でも眺めることができます。

今回は6つの装飾を紹介します。

 

虹梁(こうりょう)

虹梁は簡単に言うと横向きの柱のことです。種類は様々で、使用する場所によっても名前が違っています。建物の一部として重要な役割がありますので、古いものでは彫刻をあまり見られませんが、新しくなるにつれ両側と下の部分にも装飾されるようになりました。

一番面白い形の虹梁はぐにゃっと曲がっている海老虹梁だと思います。2つの柱の間の高低差が激しいときによく使われます。

ちなみにこれ↓は最近見た小さい神社の虹梁です。

 

笈形(おいがた)

虹梁の上に時々、大根に似ている太くて小さい柱か四角形の普通の柱があります。その両側にある装飾は笈形です。

説明するより写真を見たほうが早いですね。東大寺に行ったことがある方でも知らない方は多いと思いますが笈形はここにあります。

かなり高い位置にあるので、逆に気づけたらすごいです。(笑)

今日紹介する他の装飾と違って、寺院によっては笈形がないところもあります。
実はこの笈形に似ている装飾があります。それは何かというと蟇股です。

 

蟇股(かえるまた)

蟇股と笈形の違いは何でしょうか?

蟇股は2つの虹梁の間にある装飾です。写真を見たほうがわかりやすいかもしれません。

上の部分は笈形で、下の部分は蟇股です。虹梁の奇麗な彫刻も少し見られますね。

 

蟇股の3つの部分は脚、眉と眼玉と言います。眉の種類もいっぱいあり、虹梁の装飾の1つでもあります。

蟇股は最初に構造的な役割も果たしたため、奈良時代から存在します。古いものはどんな形だったのか、気になったらぜひ法隆寺など見に行って探してみてください。

時代が進むにつれて蟇股の形が細くなって、彫刻が複雑になり、絵のように奇麗になりました。刻まれた絵の柄は様々で、植物、動物、波、雲、炎などもあります。

 

懸魚(げぎょ)

懸魚の本来の発音は「けんぎょ」といって、中国から伝わってきたもので、元々彫られている魚が建物を火から守ってくれると信じられていました。 懸魚は位置と形によっても分類できます。

懸魚の真ん中には六葉(ろくよう)という木造あるいは金造の飾りがあります。六葉は懸魚、扉と門に使用されている六つの花びら(主に葵や菱)の形をした飾りです。

7世紀から使用しましたが、位置によってもろい装飾で、一番古くから残ったのは鎌倉時代のものです。形はとても多く存在していて、寺院だけではなく住宅、門など色々ななところで見ることができます。

下記にあるのはカリマタ懸魚といって、矢の形をしています。真ん中に六葉があります。

 そして、これは三花懸魚といって、三つの花は奇麗に見えますね。そして懸魚の両側にある装飾は鰭(ひれ)です。

 

手挟(たばさみ)

向拝を知っていますでしょうか?

寺院の本堂や本殿の正面で時々天井が前に飛び出ている部分がありますね。その下に手挟みがあります。

最初は植物の形でしたが、徐々に複雑なパターンも刻んで、芍薬(しゃくやく)、蓮華と唐草模様、鳳凰と天人も奇麗に彫刻されました。

写真を見ると奇麗な植物が刻まれた手挟があります。そしてもう一つ、木鼻もちらっと見えます。さて、木鼻とは何でしょうか。

木鼻(きばな)

柱の外側に延長してつけられている装飾が木鼻です。

当初、木鼻の形はシンプルで、拳鼻(こくしばな)と呼ばれました。13世紀の禅宗様で葉っぱ、植物、雲、波の形が流行りました。大仏様の場合木鼻は動物の形をしています。像、獅子、獏(ばく)の形のものが多いです。

写真に写っているのは獏鼻です。

繧繝 (うんげん)

さて、最後ですが、装飾の中で、色鮮やかなものもあります。

その色付けを繧繝といって、同じ色を濃から淡へ、淡から濃へと層をなすように繰り返す彩色法のことです。

また、波型の木鼻などを白で色付けることも珍しくないです。東福寺を訪れる方は見てみてください。

おすすめの本

装飾についてもっと知りたいと思っている方にお勧めの本があります。

日本古建築の全装飾を紹介している、近藤豊の「古建築の細部意匠」という本です。屋根の装飾、瓦、金属などについても書かれています。

以上です。これを見て、今度寺院に行くときに上を見ながら「あ、本当だ、こんな装飾もあるのだなあ」と気づいてもらえたらすごく嬉しいです。かなり目立つ装飾もありますので、遠い場所、例えば電車からも見られるかもしれません。(笑)

最後までお読みいただきありがとうございました。